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- 日本におけるアーユルヴェーダの現状と将来
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- 上馬場 和夫
- 富山県国際伝統医学センター次長
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- [アーユルヴェーダの日本における歴史]
- アーユルヴェーダの日本における歴史は、紀元6世紀の仏教伝来まで遡る。仏教が伝来した時、
- アーユルヴェーダは仏教医学として日本に伝えられたのであった。それ以来、日本人はインドの
- 習慣をとりいれてきた。その中には、アーユルヴェーダやヨーガの習慣もある。また、日本語で
- 旦那とか世話などという言葉は、そのころに伝えられたサンスクリット語に由来したものと考え
- られる。江戸時代に、日本の南方諸島ではインドから伝えれたオイルマッサージが行われていた
- という。しかし、アーユルヴェーダは、中国から伝えられた漢方医学ほど普及はしなかった。
- 漢方医学は江戸時代や明治時代に繁栄し、その普及は頂点に達した。 が、アーユルヴェーダ
- が日本で認識されるのは1970年代になってからである。故丸山博大阪大学医学部衛生学教授
- は、幡井勉教授らと、インドをおとづれたのであった。その時彼らはグジャラート・アーユルヴ
- ェーダ大学を訪問し、アーユルヴェーダのすばらしさに心打たれた。
- 帰国後、彼はアーユルヴェーダ研究会を設立し、アーユルヴェーダを学び研究することを開始
- した。そして、「アーユルヴェーダ研究」を創刊した。それが1970年のことであった。
- 数年内に、幡井勉教授は、東洋伝承医学研究所&ハタイクリニックを独自に設立し、東洋医学
- と西洋医学の統合した診療も開始した。
- また、稲村女史が、単身インドに赴き、権威あるグジャラート・アーユルヴェーダ大学に入学
- したのであった。彼女は、5年間のアーユルヴェーダ医師としての教学課程を日本人として初め
- て終了し、さらには大学院も修了した。
- 1980年代に入り、クリシュナ
U.K.氏が、日本の岡山大学医学公衆衛生学教室に入り、学位を取
- 得した後、東洋伝承医学研究所の副所長として、本場のアーユルヴェーダの日本への普及に人生を
- ささげることとなった。
- 彼は、日本語でアーユヴェーダの教科書を何冊かかきあげた。稲村アーユルヴェーダ医師も、グ
- ジャラート・アーユルヴェーダ大学での教課程を終了した後は、大阪アーユルヴェーダ研究所を
- 設立し、アーユルヴェーダの日本への普及に精力をささげることとなった。
- 1988年には、マハリシ・アーユルヴェーダが、TM(超越瞑想)の普及と共に、日本に取り
- 入れられた、最初のマハリシ・アーユルヴェーダの講義をうけたのが、私と高橋和巳医師などであ
- ったが、数年後には、蓮村誠医師、玉城悟医師もマハリシ・アーユルヴェーダの講義をうけること
- となる。彼らは、インドのラジュー医師始め、マハリシ・アーユルヴェーダの医師から講義を受け
- たのであった。
- 1992年に、彼らは日本マハリシ・アーユルヴェーダ協会を、マハリシ後総合研究所のバックアッ
- プの上で設立することとなった。1994年になり、東洋伝承医学研究所は、アーユルヴェーダの教
- 育プログラムを開始した。これは、セルフケアコースと、専門家コースの二本立てであった。主
- なる講師は、クリシュナUKであったが、幡井勉、加藤 幸雄、高橋佳里奈、西川眞知子、故橋
- 本健、上馬場和夫らが補助する形で開始された。
- 同じころ、ハタイクリニック、岡本記念クリニック、マハリシ・立Nリニックでも、アーユルヴ
- ェーダの診療が開始されることになった。
- しかし、これらは通院患者のために施設であった。1998年になったやっと、マハリシ・那須クリニ
- ックや二本松に湯川荘(福島県)が開業し、入院してのアーユルヴェーダ治療が受けられるよう
- になった。
1999年には、アーユルヴェーダ研究会が、会員数(それまでは500名程度)の定着
- を計るためと、公的な認知度を高めるために、「日本アーユルヴェーダ学会」に改称された。
- また、同年富山県に日本で初めての世界中の伝統医学を研究する公的機関、富山県国際伝統医学セ
- ンターが創設された。それは、主にアーユルヴェーダを始めとする伝統医学の生理学的研究を行
- うことを目的としている。
- 2001年、21世紀最初の年には、東洋伝承医学研究所は、インド・グジャラート・アーユルヴェ
- ーダ大学と提携し、日本における分校として正式なアーユルヴェーダの教育プログラムを開始す
- ることができるようになった。名称を、日本アーユルヴェーダスクールとし、校長には、グジャ
- ラート・アーユルヴェーダ大学大学院を修了したクリシュナUK氏が就任した。
-
-
表1
日本におけるアーユルヴェーダの歴史概説
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- 6世紀:仏教の伝来と共にアーユルヴェーが日本に入る
- 1970年代:アーユルヴェーダ研究会が創立され、「アーユルヴェーダ研究」が発刊。
-
代表者:故丸山博、幡井勉、難波恒夫ら。
- 幡井勉氏が東洋伝承医学研究所を創立
- 稲村ヒロエ氏が、グジャラート・アーユルヴェーダ大学入学(大学院も終了)
- クリシュナUK氏が岡山大学医学部に入学して学位を取得後、東洋伝承医学
- 研究所の副所長として、アーユルヴェーダの日本への普及に努める。
- マハリシ・アーユルヴェーダが日本に導入される(1988)。
- 東洋伝承医学研究所が、アーユルヴェーダ教育プログラムを開始する。
- アーユルヴェーダの診療が、ハタイクリニック、岡本記念クリニック、マハ
- リシ立川クリニック、マハリシ那須クリニックなどで開始される。
- 1999年:「アーユルヴェーダ研究会」から「日本アーユルヴェーダ学会」へと発展。
- 2001年:日本アーユルヴェーダスクールが、インド・グジャラートアーユルヴェーダ大
- 学との提携のもとに開校。校長はクリシュナ
U.K.氏。
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- [日本におけるアーユルヴェーダの現状]
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- 表2 日本におけるアーユルヴェーダの普及、教育機関
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素人むけ
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専門家むけ
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東洋伝承医学研究所
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●
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●
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大阪アーユルヴェーダ研究所
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●
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マハリシ総合研究所
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●
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●
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伝承健康医学研究所
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●
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ビューティライフ研究所
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●
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日本ナチュラルヒーリングセンター
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●
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高岡ヒーリングセンター
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●
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ムクティ
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●
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日本ヨーガニケタン
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●
|
●
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アーユルヴェーダスクール
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●
|
●
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日本アーユルヴェーダ学会
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●
|
●
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-
- 2)臨床
- A) アーユルヴェーダ診療の日本における実践
- ここ10年来、日本には数多くのアーユルヴェーダ実践施設が開設された。歯科
- 医院でもアーユルヴェーダが実践されている。表2に示されていない施設として、
- 多くのエステサロンが上げられる。これらでは、部分的にアーユルヴェーダを取
- り入れているものが多い。しかし、入院あるいは滞在して長期間のアーユルヴェ
- ーダ治療を行う施設は、マハリシ那須クリニックあるいは湯川荘だけの状況であ
- る。
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- 表3 日本におけるアーユルヴェーダ実践機関
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美容と健康
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通院患者
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入院
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ハタイクリニック
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●
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マハリシ立川クリニック
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●
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△
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マハリシ那須クリニック
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●
|
●
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秋田アーユルヴェーダ研究所
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●
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大阪アーユルヴェーダ研究所
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●
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アーユルスペース RAKU
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●
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コスモ鍼灸治療院
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●
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アークヒルズ スパ
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●
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城南歯科医院
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●歯科
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平田歯科医院
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●歯科
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ビューティライフ研究所
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●
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●介護
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日本ナチュラルヒーリングセンター/ナチュラ
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●
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ムクティ
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●ヘアケア
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楽健法本部
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●
|
●
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- B) インド産薬草の栽培
- インドの気候は、日本とは大きく異なっているため、インドの生薬を日本で栽培することは、困
- 難である。しかし、大矢氏は、面倒な問題を乗り越える努力を20年間にもわたり積み重ねた結果、
- いくつかのアーユルヴェーダ生薬、例えばアシュワガンダやトルシーなどの栽培に成功している。
- 彼の栽培場所は、日本でも寒い気候の福島県であるため、ナイロンテントで温室栽培をしている。.
-
- C)
アーユルヴェーダ製品の輸入
- アーユルヴェーダが普及するつれ、アーユルヴェーダ製品が求められるようになった。特に、ア
- ーユ泣買Fーダの薬草製剤や薬用オイル、ラサーヤナなどである。法的な問題から、直接インド
- から輸入するには問題がある品々が多い。輸入業者は、食品として、あるいは雑貨として輸入す
- ることに成功している。実際、アーユルヴェーダでは医食同源であるので、これは、医学的には
- 剤がある。
-
- 表4
アーユルヴェーダの輸入製品と業者(代表的なもの)
- 薬用オイル:明健社
- ギムネマ・シルベスタ:明治製菓KK.
- サラシア・オブロンガータ:Mモナ
- ラサーヤナ&線香:(有)アムリット
- ヘンナ:(有)グリーンノート、MMHコポレーション,
MNTH
- D-バランス(ダイベコン):創薬研究所
- ヒマラヤ・シングルズ(予定):Mモナ.
- アーサヴァ(薬用酒):創薬研究所
- 土壌改良剤:Mモナ
-
- 日本で作られたアーユルヴェーダのオリジナル商品としては、幾つかのティーなどがあるが、特
- 別なものとしては、アーユルヴェーダの治療をするロボットであろう。日本は先進工業国であり、
- 特にロボット製造技術にかけては、世界に冠たるものである。その技術をもってすれば、アーユ
- ルヴェーダの治療を行うロボットを製造することは、困難ではない。我々は、シローダーラーと
- スウエーダナをするロボットを、まずは研究の目的で試作したが、これは、同一の方法で刺激す
- ることで、科学的な研究に耐える研究とするためのものであったが、将来的には、治療にも使え
- るであろう。その時には、インドへ逆輸出することができるかもしれない。
-
- 3)アーユルヴェーダの研究
- 日本でのアーユルヴェーダの研究は、あまり進んでいない。また研究施設としても数少ない。1
- 980年代に、富山医科薬科大学の田澤は、難波恒夫教授の助言とスリランカ人アーユルヴェー
- ダ医師ピラピティア教授のサポートにより、クシャーラー・スートラの臨床研究を開始した。1990
- 年代に入り、マハリシ・アーユルヴェーダが問い入れられると、いくつかのアーユルヴェーダ研
- 究が、厚生省の補助金で行われた。これらは、パンチャカルマ療法の効果を検証しようとしたも
- ので、高橋、三次、蓮村、上馬場らの協力によりなされた。1999年になり、富山県に日本で初め
- ての公的な世界伝統医学研究機関である富山県国際伝統医学センターが設立されることとなった。富
- 山県は、長い伝統医薬の研究の歴史をもつ県であることが、設立の原動力となっていたが、研究
- の範囲は、アーユルヴェーダを含めた世界中の代替医療である。
-
- 表5
主なるアーユルヴェーダの研究機関
-
- @東洋伝承医学研究所
- A大阪アーユルヴェーダ研究所
- B富山医科薬科大学(国立大学)
- C不二越病院(富山市)
- D富山県国際伝統医学センター
- E岐阜大学医学部
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- 表6 日本におけるアーユルヴェーダ研究の主なるテーマ
- @
クシャーラ・スートラの臨床的研究(田澤, 900 cases)
- A パンチャカルマの健康増進と若返りへの有用性と有効性1,2)
-
(高橋、蓮村、三次、上馬場ら)
- B 脈診の視覚化(上馬場)3,4,5,6)
- C ラサーヤナの薬理学的、免疫学的研究(稲波、岐阜大学)
- D
ヨーガテラピー(内観瞑想)の有効性(木村)
- E
チャイルドマッサージ(神藤、宇治木、立野)
- F
アーユルヴェーダの体質と生化学的検査値との関連(上馬場)
-
Fの研究は、アーユルヴェーダにとって基本的な問題となる研究であるが、アーユルヴェーダの
- 正当性を証明するためにも、現代医学的検査とアーユルヴェーダとの概念の対応関係を調査する
- ことは意義がある。この研究では、194名の成人男性が同意書取得のもと、ドーシャチェック
- シートに回答した。そのドーシャチェックシートは、通常のアーユルヴェーダの教科書には載っ
- ている内容に従って、我々が作成したものである。
- プラクリティの診断には、各ドーシャに対して15問づつの問題を与えたので、合計45問と
- なった。それ以外に、ヴィクリティの診断のために、各ドーシャ毎に10問、合計30問を与えた。
- 各ドーシャの優勢度を、総得点に対する率からプラクリティとヴィクリティを決定した。
- 一つのドーシャの得点率(各ドーシャの得点/総合得点)が0.35以上で、他が0.30以下の例を
- 典型例とした。194例のうち、30例の典型例がおり、典型的なヴァータ体質14例、典型的な
- ピッタ体質10例、典型的なカパ体質6例であった。
- ヴィクリティについても、典型的な例は、10個のドーシャの乱れた症状それぞれが、「ト
- キニアル」以上の頻度を示す例とした。ヴィクリティについても典型的なヴァータ・ヴィクリテ
- ィは14例、ピッタ・ヴィクリティは10例、カパ・ヴィクリティは6例であった。
- 問診表に回答させた後に、体重と身長、血圧、種々の生化学的検査を194名全例に行った。
- 統計解析は、一元配置の分散分析で行い、0.05を有意水準とした。
- BMI(body mass
index)は、典型的な3つの体質の群間で、有意に差を認めた(図1)。
- つまり、カパ体質で最高値を示し、ヴァータが最低値であった。
- また血清遊離脂肪酸(FFA)も、これら体質の典型例群間で有意差を認めた。
- FFAは脂肪代謝の非常に敏感なパラメータであるが、ヴァータ体質が最も高値を、カパ体質が最
- 低値を示していた(図2)。
- これから、カパ体質は、もっとも脂肪代謝が起きにくいことを示唆された。
- この結果は、アーユルヴェーダの理論、カパ体質が最も代謝が遅いことを支持するものである。
- 一方、ピッタに関しては、ピッタ・ヴィクリティの典型例では、血清直接ビリルビン値が最も高い
- 濃度を示した(図3)。ビリルビンは、黄色い色素であり、アーユルヴェーダ的に言えば、ピッタ
- の色である。この結果も、アーユルヴェーダの理論を支持するものである。
- 図1

- (図1の説明文)
- ヴァータ体質のBMIが最低値で、カパ体質が最高値であるということは、カパが一番肥満傾向が
- あるということなので、アーユルヴェーダの理論とあうことである。
- 図2

- (図2の説明文)FFA
は体内における脂肪の代謝を反映している。ヴァータ体質で最高値でカパ
- 体質で最低値であったということは、カパ体質は、ヴァ‐タやピッタほど脂肪が燃えないという
- ことである。
- 図3

- (図3の説明文)ビリルビンは、黄色い色素であるが、黄色はピッタの色である。ピッタのヴィ
- クリティの人で直接ビリルビンが最も高値であるということは、アーユルヴェーダの節にあるも
- のである。
-
- [日本の将来におけるアーユルヴェーダの可能性]
- 21世紀は、高齢者が増加するため、疾病の予防や健康増進が求められている。アーユルヴェー
- ダは、疾病の予防と健康増進を目的としてものであり、体系的で包括的なアプローチにより、高
- 齢者のQOLを増進させる可能性がある。そういう意味で、現代の日本においても非常に大きな役割
- を担うものである。さらには、少子化の傾向が日本では進展しており、小児の心と体の健康増進
- も求められているのである。アーユルヴェーダは、子供の健康を促し、親子、祖父母と子、子供
- 同士の触れ合いを促すものであることから、家庭や社会における人間関係を改善させる可能性を
- 有するものである。このようなアーユルヴェーダの特徴故に、アーユルヴェーダは、21世紀に
- おいて日本にとってなくてはならないものとなるであろう。
- しかし、アーユルヴェーダのパンチャカルマ治療は概して高価なものが多いが、それではアー
- ユルヴェーダを日本に普及させるのに、少々無理があろう。しかし、実際は、アーユルヴェー
- ダの治療は安くて効果の高いものも多い。老人から子供まで、アーユルヴェーダの効果を安価
- に得ることができるのである。また、アーユルヴェーダは、「生命の科学」と呼ばれており、
- 過去世から来世までをも含む概念を有している。そのようなホリスティックなシステムこそが、
- 日本だけでなく、世界中において特にターミナルケアで必要とされているのである。
- これらの莫大な広がりをもつアーユルヴェーダの可能性を考えると、アーユルヴェーダは、21
- 世紀の日本において、必須となるホリスティックなシステムであろう。
-
- 表6 将来の日本におけるアーユルヴェーダの可能性
-
- @アーユルヴェーダは、疾病の予防と健康増進を目指す
- Aアーユルヴェーダは、高齢者のQOLを増進させてくれる.(介護や福祉の領域でも)
- B アーユルヴェーダは小児の健康も増進させる
- C
アーユルヴェーダは、親子、祖父母―子、子供同士の触れ合いを促すことで、人間関係を円
- 滑にして社会をよくする力をもつ
- D
アーユルヴェーダは、安価で有効性の高い多くのテクニックを有している
- E
アーユルヴェーダは、過去世から来世までをカバーする概念を有しているおり、ターミナケ
- アにおいて有用となるホリスティックなシステムである。
-
- [アーユルヴェーダを日本に輸入するにあたっての問題点]
-
- アーユルヴェーダは、日本において大きな可能性を有しているが、アーユルヴェーダを普及させ
- るにあたり幾つかの重要な問題点がある。まずは、インドの薬草や薬用オイルなどを日本にいれ
- るのは、日本ではまだ安全性や有効性が確かめられているわけではないため、日本への輸入には
- 困難がある。それらは、場合によっては効果を発揮するであろうが、特に日本人にとっては有害
- となる場合もあることは否定できない。幾つかの有名なアーユルヴェーダの薬草製剤には、砒素
- や水銀などの重金属がずいぶんと含まれている。あるいはニームオイルのように、痙攣をおこす
- などの有害成分を含む生薬もある。 また、アーユルヴェーダの治療の中には、王様の治療とい
- うことで高価なものもあり、金持ちだけが効果を一人占めしてしまうこともありえるであろう。
-
- アーユルヴェーダの治療は、人手を使うものであり、どうしても高価にならざるを得ない。
- また、仮にアーユルヴェーダを日本に取り入れられたとしても、インドのままの完全なアーユ
- ルヴェーダを実践することは困難であろう。いくらかの修飾が必要となろう。そのために、アー
- ユルヴェーダの効果が失われることもあるかもしれないが、逆にアーユルヴェーダがより、日本
- 人には効果的になることもありえよう。その場合、アーユルヴェーダの原理を守るには、古典に
- 帰るべきであろう。ただし、アーユルヴェーダの教科書に書いてあることには、矛盾するものも
- あり、また日本の生活習慣には受けいられないものもある。 そのような場合には、我々はアー
- ユルヴェーダ治療の有効性や安全性、効果の仕組みを確認し、アーユルヴェーダの本質を見失わ
- ないようにしながら、日本のアーユルヴェーダとして再構築することが必要となるであろう。
-
- 表7 日本におけるアーユルヴェーダの問題点
-
- @アーユルヴェーダの薬草や薬用オイルは、日本で認可されたものではないため。入手
- することが困難である。
- Aいくつかのアーユルヴェーダの治療は、高価であり、金持ちだけのもになる可能性が
- ある。
- Bアーユルヴェーダを修飾するアとは、その効果を失わせることになるかもしれないが、
- 逆に、日本人に対する可能性を高めることになるかもしれない。
- Cアーユルヴェーダの古典の教えには、矛盾したものもあり、日本の生活習慣と合わな
- いものもある。
- Dアーユルヴェーダの治療の有効性と安全性、効果の仕組みを明らかにすることで、ア-
- ユルヴェーダの本質を見失わないようにしながら、日本のアーユルヴェーダを再構築
- する必要があろう。
-
- [アーユルヴェーダを日本に輸入する場合の問題点を解決するアイデア]
-
- 原則的には、もし我々がアーユルヴェーダを見失いそうになった時には、古典に帰るべきであろ
- う。そのためには、アーユルヴェーダの古典を忠実に日本語に翻訳することが必要である。我々
- は、アーユルヴェーダの古典をまだ全て翻訳していない。現在、日本アーユルヴェーダ学会会員
- の有志が、山内有厳氏や潮田妙子氏を中心にして英訳チャラカ・サンヒターの日本語への翻訳を
- 進めている。 しかし、インドのアーユルヴェーダを日本でそのまま応用することにはいくつか
- の問題があり、日本の生活習慣と合わないものもある。アーユルヴェーダの教えは、明かに日本
- の常識と合わないもので、安全性や効果が確認されていないものについては、注意深く適応して
- いくことが必要であろう。
- アーユルヴェーダのグッヅなどは、補助食品や雑貨として輸入すると、法的な規制をパスする
- ことができるであろう。実際、いくつかのグッヅ、例えばラサーヤナや糖尿病薬などは継続的に
- 輸入されており、単一の生薬も将来は、輸入できるようになるであろう。
- しかしアーユルヴェーダの教えでは、その人が住む2km以内に生育する薬草や食物を使うべき
- だということも言われている。インドの薬草以外の、漢方薬などが、既に日本で認可されて健康
- 保険に認められていることもあり、日本人にはよいかもしれない。したがって、これらの漢方薬
- や薬草製剤の作用機序をアーユルヴェーダの概念に翻訳することが必要であろう。そのためには、
- 現代医学的で科学的な将来の研究ノ頼らざるをえないであろう。
- アーユルヴェーダの治療が高価であることを克服する道は、パンチャカルマなどを部分的に応
- 用することである。場合によっては、その方が便利で有効な場合もある。あるいは、人手がかか
- るのを、コンピュータで行わせることで、安全で品質の高いシステムにすることで、価格も低く
- することができよう。
-
- 表8アーユルヴェーダを日本にとりいれるにあたっての
- 問題点を解消するためのアイデア
-
- @アーユルヴェーダの古典を遵守するべきであるが、そのためには、アーユルヴェーダの古典を
- 日本語に翻訳することが必須である。
- Aアーユルヴェーダの教えであっても、明らかに常識とはずれることや、安全性や有効性に問題
- があることは、注意深く実践すべきであろう。
- Bアーユルヴェーダのグッズは、食品とか雑貨として輸入するとよいであろう。
- 日本独自あるいは日本で既に使われている中国の薬草も、インドの薬草のかわりとして用いるこ
- ともできよう。ただし、科学的な研究により安全性と有効性、作用の仕組みが明かになったもの
- で、アーユルヴェーダ的な作用機序が推測できるものがよいであろう
- Cアーユルヴェーダの治療(パンチャカルマ)は、2,3人を要するため高価になりがちである
- ので、有効で安価なシステムとするためにも、コンピュータで行わせることで、安全で質の高い
- 治療として行うとよい。
- Dパンチャカルマなどは、部分的に応用することも、簡便で有効な場合がある。
-
- [日本におけるアーユルヴェーダの将来]
- アーユルヴェーダは、科学的な研究によるエビデンスに従って、アーユルヴェーダの本質を失わ
- ないように実践されることで、日本において普及し発展するであろう。アーユルヴェーダの原理
- に従った修飾をして、部分的にパンチャカルマを応用したり、コンピュータを使用するとか、漢
- 方薬を用いるなども必要となろうが、それにより、もっと有効で安全、便利な日本におけるアー
- ユルヴェーダ(アーユルヴェーダの和讃化)が実現できるであろう。それにより、アーユルヴェ
- ーダが日本において長期的に実践されることで、幸福で有意義な、高いQOLの長寿を、日本人が享
- 受できるようになるであろう。さらには、若年者による犯罪や小児虐待など社会的な病理をも改
- 善されるであろう。21世紀には、アーユルヴェーダは、日本ばかりでなく、世界中において必
- 須とされる生き方の知恵あるいは医学の方法となるであろう。
-
- [引用文献]
- 1)高橋ら,
アーユルヴェーダの浄化療法の研究、厚生科学研究報告書、1995.
- 2)三次ら、東洋の健康増進システムの若返り作用の研究、厚生科学研究報告書、1996.
- 3) K. UEBABA et al.,Visualization and Quantitative Analysis of
Pulse Diagnosis in Ayurveda
- -nd reoprt- Ancient Science of Life,12(1-2),19-39,1994
- 4)K. UEBABA et al.,The Characteristic Features of the Tridosa
Diagnosed by Nadi Vijnanam,
- AYU(A Research Journal of Gujarat Ayurveda Univ.), 1994.
- 5)K.UEBABA,Visualization and quantitative analysis of the
pulse diagnosis in Ayurveda,AYU(A
- Research Journal of Gujarat Ayurveda Univ.) March
:1-30,1992
- 6)K.UEBABA,Visualization and quantitative analysis of Pulse
Diagnosis in Ayurveda - II
- nd Report, Ancient Scinece of Life, Vol.No,XIII, Nos.1&2
19-39,1993.
- 7)上馬場和夫ら、シローダーラーによる生理的変化、富山伝統医学研究、第2巻、31-36,
2001.
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